【発見】アメリカの貧困論文4選

経済大国でありながら、2019年の貧困率は世界第4位と貧困問題を抱える国、アメリカ。


古くからアメリカの貧困問題は解消されないままであり、貧富の差はますます広がりつつある。


今回は、アメリカの貧困の原因や対策などを取り上げた4つの論文から、アメリカの貧困問題を紐解いていく。



アメリカの貧困論文①“二つのアメリカ”― 再燃した貧困問題 ― 二村宮國著

まずは少し古い論文ではあるが、帝京大学・二村宮國教授による論文を紹介する。


2004年のアメリカの貧困の現状を記した論文で、アメリカの貧困の特徴として以下の項目が挙げられている。


  • 貧困の女性化

  • 高水準の未成年者貧困率

  • Working Poor

  • 貧困率の地域格差

  • 少数民族と移民の不当に高い貧困率


これは、2022年現在のアメリカでも問題となっており、論文が記載された当初から状況が好転していないことを示唆している。


例えば、貧困率の地域格差に関しては次のように記述されている。


地域を大きく分けて貧困率をみると、2003 年では、全米平均 12.5%に対して南部が 14.1%と大きく上回り際立っている。これに対して中西部は 10.7%にとどまっている。

引用元:“二つのアメリカ”― 再燃した貧困問題 ―


2022年現在のアメリカでも貧困率の地域格差に関しては、北部と南部で明確に分かれており南部の貧困率は約20%とより深刻な状況に陥っていると言える。


貧困を考える視点として、貧困に向き合う政策的な取り組みが紹介されているが、十分であるとは言えず、当時からアメリカの貧困問題の原因が根深いことがうかがえる。


論文の最後は以下のようにまとめられている。


富める者とそうではない者とに分裂した、不安定な“二つのアメリカ”の時代が到来しないとは言い切れないだろう。

引用元:“二つのアメリカ”― 再燃した貧困問題 ―


2022年のアメリカでは、経済的格差が問題となっており、まさに、論文で懸念された問題を抱えたアメリカの姿になっているといえる。


アメリカの貧困論文②アメリカにおける貧困対策

―社会開発的視点からみる「資産ベース福祉」の取り組み ―稲葉 美由紀著

次に紹介するのは、九州大学・稲葉美由紀教授による論文である。


2011年の論文には、アメリカの貧困対策である「資産ベース福祉」の取り組みについて取り上げている。


アメリカでは貧困対策として、生活に必要な所得の維持を中心とした「所得保証」に着目して展開されており、貧困者の福祉の向上の支援を目指したが、十分な成果を上げることができなかった。


そのため次のように資産が貧困に関係することに着目し、資産ベース福祉の取り組みを進めている。


資産が人々の福祉(well-being)の状態や経済状態を把握するための重要な指標である理由

として、1)現金化が可能なこと、2)経済的困窮に陥った時に対応できる手段となると、3)家の所有は新たな利益をもたらすこと、4)民主主義社会における「力」(政治的に重要な役職には経済力のあるエリートが多い)は資産力と関係していることがあげられている

引用元:―社会開発的視点からみる「資産ベース福祉」の取り組み ―


論文のまとめでは、資産ベース福祉の取り組みでは、所得格差から資産格差が生まれていく悪循環を断ち切り、社会的に排除されてきた貧困層へ資産形成のチャンスを与える意図があり、そのような社会政策の必然性を主張している。


しかし、2022年現在アメリカでは経済格差が広がり、ますます資産格差も広がっており、貧困問題が解決しているとは言えない。


アメリカの貧困論文③アメリカにおける貧困への視座と対策 野田博也著

アメリカの公的扶助の条件に着目し、貧困対策を取り上げている愛知県立大学・野田博也准教授による論文である。


貧困対策は貧困者の自助を促すだけでなく、貧困ではない者の自助を阻害しないようにも設計されなければならない。

引用元:アメリカにおける貧困への視座と対策


アメリカでは貧困対策としての公的扶助は、法規や運用主体が異なるため、水準や支給条件などの条件も異なる場合がある。


論文で取り上げられた貧困対策は、防貧ではなく、すでに貧困に陥った後の貧困対策。それぞれの貧困対策の適用条件を分析し、問題点を取り上げている。


例えば、就労自活するための現金給付の条件を分析すると、支給方法の特徴が事業ごとに異なっていたり、支給方法の組み合わせによっては条件が厳格化し自由・自律への制約を強めている。


しかしこれらは、政策的な議論なしに行われており、無計画に自由・自律を制約することについては検討されなければならないと論文は締めくくられている。


アメリカは他国への影響も大きく、他国の政策への援用について検討することが今後の課題となる。


アメリカの貧困論文④ラテンアメリカの貧困問題 米村明夫著

アメリカの貧困問題を、ラテンアメリカの歴史や地域性から考察する論文である。


ラテンアメリカ地域は1950~60年代に開発が続き、1970年代まではかなりの経済成長がみられた一方、経済的従属性の深化や社会的不平等が拡大し批判の対象となっていた。


ラテンアメリカの貧困の原因は、完全失業率の高さや収入の低さによる。ラテンアメリカの開発に伴い工業化が進む中で、雇用の機会を求め農村から都市部への人口流出が進み、農村での貧困率が上がる結果となった。


しかし、農村から都市部へ移った場合、資産が低い状態からスタートするが、都市部への人口の集中により低所得者のための公共サービスが追いつかず、満足する収入が得られないことも多い。


都市での収入や公共サービスの享受が約束されないにも関わらず、多くの人が都市部に集中するのは、都市のほうが農村よりもましであると考えられているためである。


農村の貧困化が進む限り、都市への人口集中はすすみ、また都市における貧困化現象も顕著となるであろう。

引用元:ラテンアメリカの貧困問題


これは、まさに最初の論文“二つのアメリカ”― 再燃した貧困問題 ― で紹介したアメリカの貧困の地域格差の内情について表していると言える。


まとめ

前半2つの論文は2004年、2011年と少し前の論文であるにも関わらず、2022年現在のアメリカにおける問題と同じ問題を抱えていることがわかる。


懸念されていた問題がそのまま、現在のアメリカでも問題となっている現状には驚いた。SDGs目標では1番に貧困をなくそうが掲げられている。誰もが安心して暮らせる世界を目指すため、アメリカの現状から私たちも学ばなければならない。


※こちらの記事を代表が解説しておりますので、是非ご覧ください。



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